NJF2016レポート by 井上淳也

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ゴールデンウィーク終盤の5月5日~8日、オランダの西部の街Arnhemでは、今年一番の快晴の中、オランダ最大のジャグリングイベントNederlands Jongleer Festival(NJF)が行われました。そのNJFに全日参加して来たのでレポートしたいと思います。
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NJFとは、毎年5月上旬の週末の連休に行われる、オランダ最大のジャグリングフェスティバルです。ショーやワークショップ、ゲームなどを通じて様々な人と交流することができます。
今年で26回目になるNJFは、Arnhem市内の学校を貸しきって開催されており、宿泊や食事がついていました。ちょうど日本のJJFに大学のサークルの合宿を混ぜたような感じです。参加者も、日本でいう狭義の「ジャグリング」にとどまらず、ヨガ、一輪車、アクロバット、フラフープ、エアリアルなど様々なジャンルの「ジャグラー」達が老若男女問わず集まります。
費用は全日程参加で、早期予約でも99ユーロと、ヨーロッパのコンベンションにしてはかなり高め(安ければ週末2泊3日で30ユーロほど)。しかも年々値上がりしているとか。
食事はブランチと夕食がバイキング形式で提供されます。食器は自分で持っていくか、近くのスーパーで紙皿等を買ってくる必要があります。
宿泊は学校の教室で雑魚寝か、校庭の芝生にテントを張ってキャンプするかになります。寝袋や下に敷くマットなどは、ヨーロッパのジャグリングコンベンションでは必需品です。

参加者
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今回は400人近くの人がNJFに参加していました。オランダの他に、隣接している西部ドイツからの参加者も多く、その他にはイギリス、フランス、スエーデンなどの近隣諸国からも数名見られました。人口1700万人弱、国土面積も九州とほぼ同じの小さな国では、国内のジャグラーはほぼ全員知り合い同士なため、国外からの参加者は歓迎されます。

道具は、ボールとクラブが大半。ディアボロは人数は多くはないものの3ディアのできる上級者が多かった印象です。
日本では大学生の割合が高いジャグリング人口ですが、ティーンエージャーや中高年の人も多く見られました。

1日目


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先週は季節外れの凍えるような寒さだったのが一変し、第1日目は今年一番の快晴。絶好のジャグリング日和です。初日は昼ごろから受付が始まり、受付を済ました参加者たちが、文字通り場所を選ばずにいたるところでジャグリングし始めます。天気が良かったので、校庭の芝生でカードゲームをしたり、持参の楽器を演奏したり、昼寝をしたりする人もいて、本当に自由気ままな午後でした。

オープニングショー

バイキング形式の夕食をおいしく頂いたあとは、体育館でゲストCarlos Zaspelによる30分ほどのチャイニーズポールを使ったショーが開かれました。チャイニーズポールとは、地面に垂直に建てられた数メートルほどの柱で、ポールを登ったり降りたりしながらアクロバティックな技を繰り出していきます。
彼の演技では、固定されたポールの周りにもう一本、上部のみが固定されたスイングポールが取り付けられた珍しいタイプが使われていました。ポールの演技はそれまで見たことがなかったのですが、固定されたポールとスイングするポール、この2本のポールの動と静がストーリーに巧みに組み込まれた作品だったと感じました。

ショーのあとは、ファイヤープレースが解禁となり、ポイやスタッフなどスイング系の道具を中心に、ファイヤー好きなジャグラー達が焚き火を囲んで楽しくジャグリングしていました。NJFでは体育館も24時間開放されているので、日をまたいでジャグリングすることができます(中には徹夜で練習する熱心なジャグラーも)。

2日目


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ほとんどの参加者は前夜遅くまで練習していたため、朝早く起きているのは小さな子供を含む家族連れがほとんど。昼前には流石にほとんどの参加者は起きてきていて、遅めの朝食(ブランチ)をとった後は、体育館で練習したりワークショップに参加したり、外でひなたぼっこをしたり各々好きなように過ごします。

Volley Club

午後にはクラブを使ったバレーボールのトーナメントが行われました。2人で1チームなので、ビーチバレーに近いかも知れません。バレーボールの代わりにクラブを投げ合い、投げられたクラブをキャッチしてそのままジャグリングすることでラリーを続けていきます。上級者になると投げるクラブに様々な回転を加えたり、スイングでフェイントをかけるなど、クラブならではのトリックも見られ、盛り上がります。筆者はこの後のオープンステージに出演するため参加できなかったのが非常に残念でした。
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↑女の子に人気のアクロバット

オープンステージ

参加者が誰でも自分のショーを披露することができるステージです。筆者もボールとハットの演技で出演させてもらいました。他にもボール、フラフープ、ポイ、ディアボロなど6人がパフォーマンスを披露しました。参加者400人弱に対して演者6人だけというのは若干少なく、人数としては物足りなかったかも知れませんが、ショーの内容はどれも独自の色を出した、日本では見られないスタイルや構成のもので、十分に楽しめました。

ちなみに、オープンステージに出演するためには、チケット予約時や、会場到着時に受付でオープンステージに出たいという旨を伝えればOKです。技術審査等はありません。オープンステージ出演者は昼ごろに出演の順番や音響、必要な小道具などについて打ち合わせをした後、数回通し練習をすることができました。演者のための控室のようなものはありませんが、ショー直前は、ついたてで隠されたステージの裏で少しだけ練習することは可能でした。

3日目


3日目の昼過ぎには、Arnhem市内でパレードが予定されていたのですが、その日は自転車の国際レース、ジロ・デ・イタリアが行われていた関係で中止になってしまいました。そんなこと事前にわかっていたことでは?と個人的には残念に思っていたのですが、周りは意外と気にすることもなく、普通にジャグリングしていました。

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ガラショー

夜はGala Showと呼ばれるゲストステージ。全日のオープンステージとは違って、NJF側によってこのショーのために招待された人たちによるステージです。NJFのガラショーは毎年豪華なゲストが来ることで知られており、特に25回目の昨年は前回JJFゲストAnni Küpperや「伝説的」と称されるバナナを使ったマニピュレーションショーのJoseph Viatteなどそうそうたるラインアップでした。そんな豪華な前年と比べると、どうしても今年のメンバーは今ひとつビッグネームに欠けるという前評判でした。技術レベル的に特別難しい技は見られませんでしたが、プロならではの凝った演出や大掛かりな仕掛けなど、他では見られないようなショーを楽しむことができました。特に、スイスからのゲストSolvejg Weyenethの演目では、舞台の両端に張られた2本の紐と1つのディアボロによる、アイデアあふれる技の数々と、音楽とうまく調和した演技の完成度は非常に高く、観客全員スタンディングオベーションの素晴らしいショーでした。
ファイトナイト

ショーの興奮冷めやらぬ間に、体育館でクラブコンバットのトーナメント、ファイトナイトが行われました。クラブコンバットは、クラブでジャグリングしながら、相手を妨害し、最後まで落とさずにジャグリングを続けたものが勝ちとなる競技です。
午前中に行われた予選を通過した実力者たちによる白熱した戦いが繰り広げられました。今回のNJFでは世界ランキング1位のLuke Burrageなどランク上位者が勢揃いでした。コンバット本戦では準決勝で、地元オランダのランキング4位、Rob van Heijstがホームの圧倒的な応援を受けて、現王者Lukeを破るという番狂わせを起こし、会場は割れんばかりに盛り上がりました。Robはその勢いのまま決勝でも接戦を制し、このトーナメントで優勝したのですが、いくら地元とは言え、Robへの声援は圧倒的で、周りから非常に愛されているジャグラーなのだなと感じました。

レネゲード

ファイトナイトが終わる頃にはもう12時近くになっていましたが、NJF3日目はまだまだ続きます。レネゲードというのは、ショーで見せるほどちゃんとしたものではない技や、面白い一発芸などを披露する場です。日本でエクストリームジャグリングと呼ばれているスタイルに似ていると思いますが、今回のレネゲードは、薄暗いバーのようなセッティングでかなりリラックスした中で行われていました。内容も、難しい技を見せると言うよりは、順番に面白いことをして観客を楽しませるというような方向性のものが多かったです。

ディスコ

真夜中を過ぎても、NJF参加者は眠る様子も全く見せず、レネゲード会場に大音量で音楽が流れると、そこはディスコへと早変わり。オランダのジャグリングフェスティバルではいつもディスコを開いたり、音楽バンドを呼んだりするのが恒例のようです。ここではジャグリングをするでもなく、ただひたすら踊ります。日本人には馴染みの薄い文化かもしれませんが、一度楽しみ方を覚えるとハマってしまいます。

最終日


ゲーム

最終日には誰でも参加できるいくつかのゲームが行われました。5ボールエンデュランスやサイモンセッズな定番なものもあれば、一輪車コンバットや逆立ちエンデュランス、オランダらしくチューリップでバランスなど日本のジャグリングイベントではあまり見かけない珍しいゲームもありました。早くゲームから脱落してしまっても、終盤まで残っている人を応援したり、単に高い技術に関心したりして、最後まで楽しめました。

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クロージングショー

NJF最後のイベントはクロージングショー。ショーで始まりショーで終わります。Tall Tales Acrobaticsという男女二人組による1時間弱の演劇形式のショーでした。ジャグリングだけでなく、マジック、アクロバット、エアリアル、マイムなど様々な要素が巧妙にストーリに組み込まれていて、さすがプロの演技だなと関心させられました。
近年、日本でもジャグリングと演劇を組み合わせようとする試みが多く見られますが、彼らの演技はそんな人たちに取っても、非常に参考になるものではないでしょうか。

総評


4日間にわたって開催されたNJF。毎日何かしらのショーが行われるという、なんとも贅沢なプログラムでした。天気にも恵まれ、全日十分すぎるほどにジャグリングもでき、ご飯も美味しかったし、環境的にも大満足です。
オランダの大学では、サークル活動が活発ではなく、大学生の年代のジャグラーが比較的少なく、一方で地域ごとに中高生のサーカスグループがあるようで、ティーンエージャーのジャグラーが多かったのが印象的でした。しかし彼らの中でも一部の熱心なジャグラー以外は大学に入るとジャグリングをやめてしまうというのを聞いて、とても残念に思いました。日本の多くのジャグラーが大学でジャグリングに出会うのとは対照的です。
技術的には、一部とてもうまい人はいますが全体のジャグリングのレベルは日本のほうが圧倒的に上です。大学のサークルの影響を大きく受け、指導がしっかししていて、競争も激しい日本のジャグリング界とは違い、ヨーロッパでは自由で個人主義の人が多いです。自然と自由を愛するヒッピー文化に近いものがあり、日本とは全く違うジャグリング文化に触れることができ、「こんなジャグリング(生き方)もあるんだな」ということを感じることができます。そんな意味でも、もっと多くの日本人ジャグラーに、ヨーロッパのジャグリングイベントを知ってもらいたいなと思っています。

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文=井上淳也

公開 2016/06/10